アンハッピー・ウエディング〜後編〜

しかし。

「お帰りなさいませ、ご主人様ー!」

「お帰りなさいませー!」

メイドカフェに入るなり、何人ものメイド服姿の女子生徒がに笑顔で迎えられ。

思わずたじろいでしまったのは、俺だけではないだろう。

メイドカフェなんだから、この常套句で迎えられるのは当たり前なんだろうけど。

それにしたって、初めてだと結構ビビるよ。

いかにもメイドカフェ、って感じ…。いや、メイドカフェなんだけど…。

「おぉ…!やっべ、新鮮な感覚…!」

雛堂も、思わずこの反応。

「お席にご案内しますね。こちらにどうぞー」

ウェーブ髪の女の子が、にこやかに俺達を席に案内してくれた。

さっきの大学生二人組が言ってたのって、この子のことか?

「さっき言ってたのって、この子かな?」

雛堂も気づいたようで、小声で俺に尋ねてきた。

さぁ…知らねーし…。寿々花さんじゃないならどうでも良いけど…。

「確かに、いかにもお嬢様然としてて可愛いよなぁ。こんな可愛いメイドさんに接客されたら、そりゃ帰りたくないって」

「…そうか…?別に、普通の女子高生にしか見えないけどな…」

「悠理兄さん…。あんた今、多分無月院の姉さん以外の女の子の顔は、全部のっぺらぼうにしか見えてないんだよ」

そうかもな。

今の俺の中で女子の区分は「寿々花さん」と、「それ以外」だ。

寿々花さんじゃないなら、どんな可愛いらしい子でも、目を見張るような絶世の美女でも、所詮「それ以外」でしかない。

悪いけど。

「しかし、無月院の姉さん、いねぇな…。キッチンに引っ込んでんのかね?」

雛堂が、きょろきょろと教室の中を見渡しながら言った。

あぁ。寿々花さん、今はホールに出てないのかな。

でも、ホール係だって言ってたのに…。

この時間は担当じゃないとか…?有り得る。

何ならそのまま、一生ホール係なんて担当しなくて良いよ。