アンハッピー・ウエディング〜後編〜

それから俺と雛堂は、辛抱強く席が空くのを待ち続けた。

「…やべー。気軽に話しかけたいのに、悠理兄さんの顔が怖くて、全然話しかけられる雰囲気じゃねーや…」

「…」

「仕方ねぇ、こうなったら一人で喋るか…。いやぁ今日は良い天気だなー。絶好の文化祭日和だ。今頃講堂のステージでは、合唱部や箏部が発表してんだろうなー。あっちも見に行ってみたかったけど、さすがにそんな時間はねーからなー…」

「…」

「…うちの店、ホシイチは今頃どうなってっかな?あれからまた、一人くらい客、来てくれたのかなー?さっきの園芸委員の先輩達が、上手いこと宣伝してくれたら良いんだけど…」

「…」

「…し、しかしメイドカフェのメニューってどんな感じなのかな?定番だとオムライスとか、パンケーキとかかな?どんなメニューがあるのか知らねーけど、きっとうちの『HoShi壱番屋』のカレーの方が美味しいぞ。なぁ、悠理兄さん…」

「…」

「…頼むから何か言ってください」

…あぁ、悪いな。

全然聞こえてなかったよ。今、何か言ったか?

頭の中、それどころじゃなくてな。

「大丈夫だって、悠理兄さん。女子校なんだから。お嬢様学校なんだから。生徒の安全は最優先で守ってくれるよ。男子生徒そっちのけでな」

「…そうだと良いんだけどな」

メイド服姿の寿々花さんを、じろじろ盗み見ながらニタニタしている奴がいるかと思うと。

腹いせに、とりあえず目の前の雛堂の脳天に拳骨入れようかな、って気分にもなるよ。

「心配すんなって。きっと今頃…」

と、雛堂が言いかけたその時。

「はい、次にお待ちの2名様、お待たせしました。お席の準備が出来ましたので、どうぞお入りください」

ようやく、俺達の順番がやって来た。

やっと来たな。何だか、もう永遠に待たされたような気がするよ。

「よし、行くか…」

さながら、戦場に赴く兵隊の気分。

純粋にメイドカフェなど楽しめる心境ではない。