アンハッピー・ウエディング〜後編〜

それから、今度は雛堂や乙無も交え。

何なら、他のクラスメイトにも試食に協力してもらい。

最終的に、にわかパクリカレーショップ『HoShi壱番屋』のメニューが決まった。

色々試したけど、結局、お洒落なことや凝ったことはやめた。

サフランライスもグリーンカレーもなし。

寿々花さん大絶賛の、俺のいつものカレーは、「店主のこだわりカレー」と名を変え、メニューに載ることになった。

物は言いようだよな。

こだわりと言えば聞こえは良いが、要するにいつもと変わらない、何の変哲もないカレーってことだからな。

それから、こちらも寿々花さんお気に入りのオムカレー。

これも、メニューに載ることになった。

雛堂達にも試食してもらったんだけど、美味しいって。

俺、オムレツ作るの上手くなってる説あるな。

この春から、しょっちゅう寿々花さんにせがまれて、オムライスばっかり作ってるから。

卵の扱いが上手くなってきた気がする。

むしろ、こっちのオムカレーの方が店主のこだわり、って気がするが…。

まぁ、それはさておき…。

トッピングメニューは、定番のカツ、冷凍の唐揚げ、ウインナーソーセージの他。

グリル野菜のカレーと、ピザ用チーズを乗せたチーズカレーを用意。

辛さは好みに合わせて、甘口と辛口の二種類を準備することになった。

本物の某壱番屋カレーショップでは、1〜10辛まで選べるらしいが。

パクリカレー店では、二種類が限界である。

それに、サイドメニューとして、サラダとスープを用意することになった。

サラダと言っても、市販のカット野菜にドレッシングをかけただけの簡単サラダだし。

スープも、お湯を入れて溶かすだけの粉末スープである。

本当はサイドメニューにもこだわりたかったのだが、材料費の問題もあるし。

それに何より、そこまでこだわってちゃ、キッチンの人手が足りなくなるので。そこは妥協。

その代わり、全メニューにサービスとして、俺の手作りの糠漬けをつけることになった。

糠漬けを添えたカレー。本気でメニューにするつもりだったのか。

完成したメニューは、控えめに言ってもお洒落とは程遠い、むしろ貧乏臭いラインナップだった。

…が、雛堂は。

「大丈夫、大丈夫。これは売れるって。だって美味いもん」

と、何故か超楽観的。

寿々花さん並みの楽観的思考だな。

更に、乙無も。

「心配しなくても大丈夫ですよ。ハナから学生の文化祭で、お店のようなクオリティは求められていませんから」

とのこと。

そりゃそうだけど…そうなんだけど。

本当にこれで大丈夫なのか、心配になる。

特に、他のクラスメイトと共有する為に、俺の手抜きカレーのレシピを手書きで書くように雛堂に頼まれたとき。

レシピ(笑)だってさ。

レシピもクソもねーよ。全部目分量で適当なんだもん。

皆、レシピなんて気にせず適当に作ってくれて良いぞ。ちゃんとそれっぽい味になるから。

オムレツだけは俺が作るよ。それで問題なし。

こうして、無事(?)にメニューも決まり。

あとは、本番の文化祭当日を待つだけ…。



…だと、思っていたのだが。