アンハッピー・ウエディング〜後編〜

「悠理兄さん、兄さんの得意料理は?」

え、俺の得意料理?

…何だろう。

「…糠漬けかな」

寿々花さんも大絶賛、自家製の糠床で作る糠漬けは。

我が家の朝食のお供として、毎日食卓に上っている。

しかし、糠漬けを毎日ポリポリ齧るお嬢様って、なかなかシュールだよな。

「渋いな、兄さん…。あんた何歳だよ?」

「悪かったな。16歳だよ」

「まぁいいや。じゃ、『星見食堂』の看板メニューは、悠理兄さん特製の糠漬けを添えた、手作りカレーってことで」

マジかよ。

そんな適当な決め方で良いのか?

そんな…冷やし中華始めました(テヘペロ)みたいなノリで。

「おいおい…。もうちょっと真剣に考えた方が良いんじゃないのか?」

女装コンテストは、どんな顛末になろうが俺の責任だけで済むが。

食堂はクラスの出し物なんだから、もう少し真面目に考えろよ。

食べたい奴いるか?カレーはともかく、俺の糠漬け。

そもそも、カレーは糠漬けじゃなくて、福神漬けでは…?

「それに俺、至って普通のカレーしか作れないぞ」

お洒落なカレーショップでよくある、グリーンカレーとかキーマカレーとか、手作りナンを添えたスープカレー…みたいな。

ああいうお洒落な料理とは、全く以て無縁。

バターチキンカレーくらいなら、まだ作ることもあるけど。

それだって、精々市販のルーを使って作る、何の変哲も無いカレーだ。

じゃがいもと人参がゴロゴロ入った、ご飯にかけて食べる普通のカレー。

市販のルー無しで作ったことなんて、一度もないしな。

…我ながら、所帯じみてんなぁ…。