アンハッピー・ウエディング〜後編〜

寿々花さんからメイドカフェの話を聞かされた、翌日。

俺は雛堂と乙無に、その話をした。

寿々花さんのクラスはメイドカフェやるんだって、って。

すると、まず雛堂の反応は。

「マジかよ、行きてぇ!ナマ女子高生のメイド服コスプレとか、是非この目で見ないと!」

あまりにも下衆過ぎるから、雛堂は今この場で成敗しても良いだろうか。

あんたみたいな不貞な輩がいるから、俺の心労が絶えないんだよ。

一方、乙無の反応は。

「それ、真面目な話、大丈夫なんですかね?大也さんみたいな小汚い下衆男が来たら…」

「あぁ…。俺もそれが心配でな…」

女子校なんだぞ?お嬢様学校だぞ?

変な気を起こす奴がいないとも限らない。

警備とかつけた方が良いんじゃね?

何なら、その警備の為に男子部の生徒を駆り出しても良いぞ。

今回は許す。

「悠理兄さん的には、やっぱり嫌なのか?愛しの嫁ちゃんがメイド服を着て、自分以外の男に『お帰りなさいませ〜』とか言ってたら」

雛堂は真面目な顔して、何を言ってんだ?

ちょっと一回、バケツの水を頭からぶちまけてやろうか。

「他の男に色目を使われたらって思うと、そりゃあ気が気じゃないよなー。悠理兄さんも大変だな」

「…雛堂。俺はさっきから真面目な話をしてるんだよ。真面目に話が聞けないなら…」

「ちょ、目が怖い。悠理兄さん、目が怖いって!冗談だから!」

言って良い冗談と、言ってはいけない冗談ってものがあるんだよ。

分かったか。

すると、乙無が。

「人の心配をするのも結構ですが、悠理さんはまず、自分の心配もするべきでは?」

と、聞いてきた。

「はぁ…?俺の中には今、寿々花さんのこと以上に心配なことはねーよ」

「そうですか。でも、うちのクラスの出し物は『星見食堂』に決まってるので、その為の準備もしないといけませんよ」

…そうだった。

寿々花さんのことは勿論、超絶心配だけどさ。

他にも色々と…考えなきゃならないことが山積みなんだよなぁ…。

はぁ、胃が痛い。

「そうだな。そろそろ、もっと詳細に具体的なことを決めておかないと…」

「食材の仕入れや、調理器具の貸し出し…。レシピやメニュー作成、やるべきことはたくさんありますからね」

「…はぁー…」

思わず、特大の溜め息が出てしまった。

初めてだよ。こんなに気の重い文化祭はさ。

文化祭って楽しいもんじゃねーの?現状、胃が痛いだけで全然楽しめてねーよ。

しかも。

「食堂のことだけじゃねーぞ、悠理兄さん。忘れてねぇよな?」

「は?何を?」

「女装コンテストの準備。こっちも並行して進めなきゃいけないの、分かってるよな?」

「…」

…そうだった。

もう、一生忘れていたかったよ。