その翌日。

「悠理君、悠理君。あのねー」

「お、おぉ、どうした…?」

今日の放課後も、雛堂と一緒に文化祭実行委員の仕事を手伝って。

俺が帰宅するなり、寿々花さんがウキウキの様子でやって来た。

楽しそうで何より。

どうした。ロミオカートのレートがまた上がったか?

それとも、今度は別のイケメンを攻略したのか。

すると。

「あのね、あのね。驚かないで聞いてね?」

「あぁ。驚かないよ。あんたのやること為すことに、いちいち驚いてたら心臓がいくつあっても足りないからな」

「良かったー」

嫌味が全然通じない系女子、寿々花さん。

「で、どうしたんだ?」

「あのね、今日ね、私も出ることに決まったんだー」

…出る?

…って、何に?

「何の話だ?」

「女装!」

女装の話はやめてくれよ。

必死に考えないようにしてんだから。…って。

…何だと?

「どういうことだ?あんた、まさか出場者に選ばれたのか?」

「うん」

「女装・男装コンテストに?」

「うん」

こくり、と頷く寿々花さん。

…オーマイガッ…。

二人揃って、生け贄に捧げられるとは…。

俺達、揃ってツイてないなぁ…。

「そうか…。あんたもあみだくじで負けたのか…」

運ねぇなぁ、俺達…。

いや、俺以上に寿々花さんの方が、もっと運がないだろう。

だって、俺のクラスは十数人のうちから一人、生け贄が選出されたけど。

寿々花さんのいる女子部は、ひとクラス40人くらいいるんだろう?

40分の1の確率で負けたということは、相当運が無いぞ。

気の毒に。今日の夕飯魚の煮付けにするつもりだったけど、可哀想だからオムライスにしてやるよ。

しかし。

「…ふぇ?あみだくじ?」

こてん、と首を傾げる寿々花さん。

「あみだくじで決めたんじゃないのか?それともじゃんけんか?」

じゃんけんで連敗しまくったのか。それはそれで気の毒。

どうでも良い時には勝てるけど、いざ正念場という時には途端に勝てなくなる。じゃんけんあるあるだよな。

「じゃんけん?うん。じゃんけんで決めたよ」

「そうか…。寿々花さん、あんたじゃんけん弱かったんだな…」

やっぱり可哀想だから、今日のオムライスは特大にしてやるよ。

…と、思ったが。

「?弱くないよ。勝ったんだから」

「…は?」

…どういうこと?