四人でお化け屋敷に入って、腰抜かして半泣きになってるの、俺だけかよ。

本当情けない。 

ここは嘘でも良いから、虚勢を張っておきたかった。

が、そのような気力もなく。

休憩と、叫び過ぎてがガラガラになった喉を癒やす為に、俺達はデパートのカフェに立ち寄った。

「悠理君、大丈夫?私のオレンジジュース飲む?」

「…大丈夫…」

冷たいアイスコーヒーで喉を潤す。

叫びまくった喉に、アイスコーヒーが滲みるよ。 

あー情けない。

こういう言い方するのは失礼だけどさ。

女性の悲鳴は、まだ聞くに堪えられる。

しかし、男の悲鳴ほど情けなく、聞くに堪えないものはないと思うんだよ。

ましてや、女性である寿々花さんは全く怯えてなくて、何が出てきても「わー」って棒読みで呟いてるだけなのに。

隣で俺だけガチ悲鳴って、そんな情けないことある?

それなのに、寿々花さんは情けない俺を笑うことはなく。

「悠理君、元気出して。私のパフェ食べて良いよ」

むしろ気を遣って、パフェを勧めてくれた。

ありがとうな。

でも、優しくされるとむしろ、自分の情けなさが身に滲みるんだわ。

「笑い飛ばして良いんだぞ。この腰抜け、って…」

いっそ、そうしてくれた方が気持ちが楽まである。

しかし。

「何で?悠理君、ちゃんと腰ついてるよ」

いや、そういうことじゃなくてな…。

「大丈夫だって、星見の兄さん。半泣きで腰抜かしてるの、兄さんだけじゃないじゃん」

「他の客は泣き喚いたり、腰が砕けて立てなくなってる人もいましたからね。それに比べたら、悠理さんはまだマシでは?」

「そうそう。叫びまくってたけど、何とか逃げずにゴール出来たもんな」

雛堂と乙無にも慰められた。

友人達の優しさが心に滲みるようだ。

「それに、自分も結構ビビったぞ。特に、あの手術台に寝そべってた…」

「あぁぁ、もう言うな。思い出させるな」

トラウマになるだろ。

何とか思い出さないように、必死に気を逸らしてるんだよ。俺は。

「あと、霊安室のアレもヤバかっ…」

「言うなって言ってるだろ、馬鹿」

あれは夢に出てくるレベル。

誰だよ、あんな演出考えた奴。絶対ろくな趣味してないって。

「いやー、楽しかったな。お化け屋敷に行って、帰りにこうしてカフェでアイス食べてさー」

と、雛堂はご満悦。

良い気なもんだ。お陰で、俺はトラウマを増やしたっていうのに。

「しかも、何だかんだ女子と一緒に過ごせたし。夏っぽいこと最高だな!」

「その女子は悠理さんのフィアンセだから、完全に脈なしなんですけどね」

という、乙無のツッコミはスルー。

「…?みゃくなし?死んでるの?」

「…こいつらの言うことは、適当にスルーして良いんだぞ、寿々花さん」

まともに相手しなくて良いから。お人好しだなあんたは。