しかし。

ゲーム機の初期設定を手伝ってもらう為に、雛堂と一緒に帰宅したところ。

…俺は、その光景を目にすることになる。





「ただいまー」

「お邪魔ーっす」

本日は、雛堂と一緒に帰宅。
  
「無月院の姉さん居るの?」

「居るはずだよ。ちょっと、先にリビングに…」

「んじゃー遠慮なく上がるわ。いつ来ても綺麗だよなぁ、この家」

そりゃどうも。

…ん?

リビングから、テレビらしき音が聞こえる。

寿々花さん、なんかテレビ観てる?

さては、また一人ホラー映画鑑賞会やってるな?

そりゃ別に良いんだが。

家に帰ってリビングに入った瞬間、画面いっぱいのエイリアンとご対面、なんてシチュエーションは御免なんだけど?

「寿々花さん、ただいま。今日は雛堂もいっ、」

「あ、悠理君おかえりー」

「…」

思わず、持っていた学生鞄を床に落っことしそうになった。

寿々花さんはリビングのカーペットの上に座って、テレビの画面と向き合っていた。

…カチャカチャと、凄まじい勢いでコントローラーを動かしながら。

「ちょっと今、手が離せないんだー。あと1ストックだから…もう少し待っててね」

寿々花さんは、画面から目を離さずにそう言った。

す、ストック?

って、何のこと?

つーか寿々花さん、俺がいない間に何やってんの?

「…?え?初期設定まだなんじゃなかったの?普通にやってんじゃん」

これには、雛堂も困惑。

俺に聞かないでくれ。俺も分かんないんだよ。この状況が。

テレビ画面の前には、例の、昨日もらったばかりのゲーム機の本体が置いてあって。

一緒に同封されていた、ゲームソフトのパッケージが転がっている。

そして、相変わらずのぽやんとした顔で、コントローラーを操作する寿々花さん。

俺には、この画面で何が起きているのか分からないが。

画面の中では、平面のステージの上で二人のキャラクターが戦っていた。

一方が寿々花さんの操るキャラで、もう一方が敵…ってことだよな?

どっちがどっちかさっぱり区別がつかないが、片方のキャラがもう片方をボコボコにしていた。

一方的な虐殺が繰り広げられている。

まぁ、仕方ないか。寿々花さんは初心者だからな。

見たところ、このゲームはゴリッゴリなアクションゲームっぽいし。

ただでさえ、寿々花さんにはアクションゲームなんてハードルが高いだろう。

そりゃあ、敵に一方的にボコられても無理もな、

「はい、終わったー」

片方のキャラが、もう片方をステージ場外に吹き飛ばしてゲームセット。

…なかなか残酷なゲームだな。

しかし驚いたのは、画面いっぱいに出てきた「You Win!」の文字だった。

…え?勝ったってこと?

…寿々花さんが?