宣言通り、甘やかして食べさせてやると。

あんなに嫌がっていた風邪薬も、驚くほど素直に飲んだ。

よし、良い子だ。

なんか、分かったような気がする。

熱があるっていうのに、勝手に起きて映画観たり遊んだり。

苦いからって薬を飲みたがらなかったり、かと思えば、あーんして食べさせて、頼んできたり。

結局のところ、こんな風に誰かに甘やかして欲しかっただけなのかもしれない。

大人の気を引きたくて、わざと悪戯して叱られようとする子供と同じようなものだ。

本当、子供なんだよな。この人。

小さい時に、ちゃんと親や大人に甘えさせてもらってないから。

未だに、図体の大きい幼稚園児のままなのだ。

その分甘やかしてやると、途端に素直になる。

乙無じゃないけど、全くこれだから人間は…と言いたくなるな。

お粥を食べ、薬を飲んだ寿々花さんは、既に再び夢の中。 

…しかも、俺の片手をぎゅっと握ったまま。

手を繋いでくれって、頼まれたんだよ。

また悪夢を見るのが怖いからって。

別に良いけどさ。手を繋ぐくらい…。

しかし、果たしてそれが悪夢防止に役立つのかと言うと…怪しいところである。

…関係あるか?これ。

よく分からないけど、寿々花さんがそうして欲しいって言うから、良いよ。

もし眠っている間に、寿々花さんが悪夢にうなされているようだったら…その時は、すぐに起こそう。

あとは、風邪薬が効き目を発揮し、朝までに少しでも熱が下がっていることに期待しよう。

だから、それまでは…。

「…おやすみ、寿々花さん。良い夢見ろよ」

寿々花さんの無邪気な寝顔に、俺はそう呟いた。