放課後、教室には日直である月太と私の二人。
放送部が流している下校の音楽を聴きながら、向き合うのは学級日誌だ。
「五十嵐、書けた?」
「あとちょっと」
最後に今日の感想を書いて終わりにしようとしたその時だった。
「げったー!」
窓の外から月太を呼ぶ声と、コンッと窓を叩く音。
「陽太」
月太は窓まで歩み寄ると鍵を開ける。
すると、外から窓が開き、生の陽太くんが現れた。
(えっ、え!、うわ……!)
突然の陽太くんの来訪に前髪を直しながら慌てふためく私と、「何」と双子の兄に塩対応な月太。
「月太は日直?」
「うん。で、何」
「姿見えたから来ただけ」
にこにことそれはもう拝みたくなるような笑みで話しかける陽太くんに月太は「あ、そ」とだけ言い窓を閉めようとする。
そんな月太に「照れるなって」と言いながら窓を止める陽太くん。
ふとその目が月太の後ろにいた私に向けられた。
ピクッと肩が跳ね、背筋が伸びる。

