ずーんという効果音がこれほど似合う状況もそうないだろう。
現場は兄の部屋、対するは女装姿の兄とクラスメイトだ。
「つまり月太は僕と同じで女装趣味仲間で、最近できた友達なんだよ」
「なるほど……」
普段の教室での月太を知るだけに、女装が趣味という個性がなかなか飲み込めない。
ちらっと月太を見るも、彼の瞳は魚のように死んでいた。
見兼ねた兄が月太の背中をぽんと叩き慰める。
「多実、この件は内密に頼むね」
「うん、まぁ、それは……うん」
内緒にしたかったであろう事実を知ってしまったことに申し訳なさが募り、控えめに返事をした。
しかし、月太の表情が晴れることはない。
兄は「げっちゃん」と呼び月太の顔を覗き込む。
「多実は理解あるから安心していいよ」
「はぁ……」
魂が抜けたような返事に兄と私は目を合わせて苦笑した。
「はぁ……」
月太のため息は続く。
「なんとかして」と兄に視線で訴えると、兄は何を思ったのか明るい表情で地雷を踏んだ。
「それにしてもびっくりしたなぁ。二人が友達だったなんて」
思わず兄の膝をバシッと叩く。
「痛い!」と大げさに痛がる兄に口パクで「バカ」と悪態をついた。
兄を責める私だけど、ちら、と月太と目が合うも「はは……」と渇いた笑みを浮かべるしかできず、兄に視線で責められた。
その直後、兄が突然「そうだ!」と言い私の腕を引っ張り────。

