とりあえず家に帰ろうと思って、その光景から目を背けて小走りで駆けると、途中でだれかと肩がぶつかった。
「あ、ごめんなさい」
「……七瀬さん?」
ぶつかった相手に名前を呼ばれて、思わず顔をあげると部活帰りらしいジャージ姿の田崎くんだった。
「……田崎くん」
「……どうかした?」
顔が暗かったのか、田崎くんは私に小さく聞いてきた。
「な、なんでもないよ」
ごまかすように笑ったのに、声は震えていた。
気づいてほしくなかったのに、たぶん田崎くんは気づいていた。
がさごそカバンをあさって、拳を私に突き出す。
思わず手を出すと、くしゃくしゃの飴玉の袋を渡された。
「これ、やるよ」
「……ありがとう」
くしゃくしゃの袋なのが田崎くんらしいな、と思わず笑ってしまった。
そのときふと田崎くんは孝ちゃんの後輩だったなと思い出す。
「じゃあまた学校で」
「……田崎くん、少しだけ時間ある?」
帰ろうとした田崎くんに、一人で溜め込んでるのもつらくて、思わず聞いてしまった。
「あるけど……そこの公園ででも話す?」
田崎くんが親指でさしたのは、駅近くにある小さな公園だった。
公園にはベンチと砂場、パンダとうさぎのスプリング遊具だけしかない。
二人でベンチに一人分の距離をあけて座る。
公園自体は駅の奥にあるので、人通りもあまりないので好都合だった。
「孝ちゃ……田邊先輩、知ってるよね?」
「エースだった人なんだから当然知ってる」
「そうだよね。私、今付き合ってて」
私の言葉に田崎くんは特に驚いた様子もなかった。
「そうなんだ」
「私から告白したんだけどね」
「うん」
「なんか、私のこと好きなのかなあって思っちゃって」
ぽつんといった言葉に、田崎くんはクスリと笑った。
なんで笑われるのかわからず、ムッとした顔をした私に田崎くんは、あ、ごめん。と謝罪。
「それさ、田邊先輩に聞いた?」
「え、ううん。聞けないよ、後悔してるっていわれたら怖いし」
「聞いていいと思うよ」
はっきりとそういった田崎くんに、私の頭上には、?が浮かぶ。
「断言していいけど、田邊先輩は七瀬さんのことめちゃくちゃ好きだよ」
「なんでそんなこと、わかるの?」
「さて、なんででしょう」
学校では眠そうな顔しかみない田崎くんが少しいたずらっ子のように微笑む。
「それ、田邊先輩に聞いたら全部解決するよ、保証する」
そんな簡単に聞けたら苦労しないし。
「田崎くんの保証なんてなんの参考にもならないんだけど」
「まあな。でも信じてみて」
そういわれると何も言えなくなる。
半信半疑だけど、聞いてもらったおかげで少し冷静になれた。
さっきのは、やっぱりサークルの集まりかなんかだろうな、と思えた。
孝ちゃんはもし別の人に気持ちがいったら、二股なんてかけずにちゃんと言う人だと、思う。



