トイレ内の鏡の前に立って、一度大きな息を吐いた。
鏡に映ってる自分を見て、さっきの女の人達が頭に蘇る。
私なんかより化粧もずっと上手で大人っぽくて。
今朝は上手くできたと思ったけど、今見たら自分がすごく子供っぽくみえてきて。
もしかして孝ちゃんはこんな私が彼女だって恥ずかしくて言えなかったのかな。
告白をOKしたことももしかして後悔してたりする?
思考が悪い方向に転ずると、どんどん思考がネガティブになる。
私は一度パンと頬を叩いた。
悪い方向に考えない。
もしかしたらあとから色々聞かれるのが面倒だっただけかも。
暗い顔してたら孝ちゃんも困るよね。
いつもの私でいくんだ。
気持ちを切り替えて、私はトイレから出た。
「孝ちゃん、お待たせ」
できるだけ笑顔を保ちながら孝ちゃんの元に向かう。
「ぜんぜん。じゃあいこっか」
孝ちゃんも優しく笑って、私たちはまたウィンドウショッピングをした。
帰りも家まで送ってくれた。
家に着いた時、私は離れがたかったけど、孝ちゃんはそんな素振りもなくて。
「じゃあまたね」
あっさりとした別れに我儘をいうこともできなくて、私はシートベルトを外した。
「あ、そうだ。友達に、孝ちゃんと付き合ってること話してもいいかな?」
絵里のことを思い出してそう尋ねると、孝ちゃんは「もちろん」とさらりと了承してくれた。
……付き合いを知られたくないってわけじゃないのかな。
その答えにほっとして、私は車のドアをあけた。
孝ちゃんは行きと同じように相合傘で玄関まで送ってくれた。
「送ってくれてありがとう。またね」
「うん。それじゃあね」
孝ちゃんとバイバイをして、車に乗り込むまで見送る。
そのまま運転席から手を振ってくれたので、私も手を振り返した。
孝ちゃんの車が見えなくなってから私も家の中に入った。
自分の部屋に入って、ふうーと息をつく。
初デート、めちゃくちゃ楽しかったんだけどなあ。
彼女と紹介してくれなかったことが頭にチラついて離れなかった。
そして。
「手とか、繋ぎたかったなあ」
孝ちゃんがいつも通りすぎて、なんだか私ばっかり好きな気がする。
付き合ったらもっと恋人みたいなことができると思ってたけど、まだ恋人らしいことって相合傘くらいでそれ以外はなし。
あの距離の相合傘なら、付き合ってない時でも孝ちゃんはきっとしてくれるし。
……でもまだ初デートだもんね。
もしかしたら次は手繋ぐかも。
ゆっくり進もうとしてくれてるのかもしれないし。
そう私はポジティブに考えて心を落ち着かせたのだった。



