「おはよー田崎くん」
おそらく朝練の影響で、机で仮眠を取っている田崎くんに挨拶しながら、自分の机にカバンを置いた。
「はよっす、七瀬さん」
田崎くんは、くわあとあくびをしながら返事を返してくれる。

そういえば田崎くんはバスケ部だから孝ちゃんの後輩だな。
仲がよかったかはわからないけど。
孝ちゃんはバスケ部のエースでキャプテンだった。試合で活躍する姿は超絶かっこよくて、私も時間が合えば見に行っていた。
もちろん孝ちゃんは学校の女子だけじゃなくて、他校の女子からもキャーキャーいわれていた。

「今日って一限なんだっけ?」
「現代文だよ。覚える気ある?」
「あんまない」
田崎くんはそれだけ聞くと興味をなくしたようにまた机に突っ伏した。
最近の朝の会話はいつもこんな感じだ。

私は椅子に座って、こっそりスマホを確認。
朝、孝ちゃんにおはようの連絡をした時に、今週は遊べるか聞いてみていた。

あ、返ってきてる。

どきどきしながら開いてみると、「俺も空いてるよ。香帆の行きたいところ行こ」ときていた。
嬉しくて、やはりにやにやしてしまう。

やった、初デートだ。
何着ようかな。

これまでもなんとかタイミングを見て二人で会ってきたのだけど、やっぱり用事を作るのが難しかった。
それが、こんな簡単に会えるようになるなんて。
彼女ってすごい。

その日の私はすごくルンルンで一日を終えた。
そしてデートの日まで、服装をどうするか化粧をするかを悩みに悩みまくったのである。