決意を新たにしてから一週間が過ぎた。
孝ちゃんとは毎日LINEはしてるけど、基本的に忙しい孝ちゃんは返事が返ってくるのは遅め。
平日はサークルとかバイトがあって時間が合わないし、この間の休みは友達と遊ぶ用事があって会ってない。
つまり、現在、お付き合いの一週間が過ぎたが現状は何も変わってないのだ。

「香帆、おはよー! 宿題やってきたー?」
学校に向かう途中で同じクラスの絵里に声をかけられる。今日も後ろのポニーテールがぴょんぴょん跳ねている。
「あ、絵里おはよー。もちろんやってきたよー」
「さっすが香帆!ちょっとみせてよー」
「宿題は自分でやらなきゃ意味ないよ」
「えー。香帆は真面目だなあ」
絵里はすぐに楽しようとするところがあるが、私は基本加担しないようにしている。本人のためにならないし。

「香帆ちゃん、おはよう」
「あ、しょうこおばあちゃんおはようー。今日も元気そうだね!」
「香帆お姉ちゃんおはよー」
「ゆみちゃんおはよ! 気をつけて学校行ってねー!」
学校に行く途中に会った近所の人に挨拶をするようにしていると、「香帆ってほんと陽キャだよねえ」と絵里にしみじみいわれた。
「え?」
「そんな色んな人に挨拶するなんてさ」
「でも、知り合いにあってるのに無視するのも変だしね」
これは孝ちゃんの真似。
孝ちゃんは老若男女問わず声をかけられるし、挨拶をしている。

「香帆ってモテるのに彼氏とかほしくないの?」
「え?」
孝ちゃんと付き合い始めたことはまだだれにもいっていない。
私自身夢みたいでまだ信じられないからだ。
「明るいし可愛いし、香帆って結構人気あるんだよ?」
「でも私告白されたことないよ」
「そりゃあ、ね」
絵里は遠い目をして、苦笑いをした。
「え? なに?」
「なんでもないよ。でも最近田崎と仲良くない?」
「ああ、田崎くん。席が隣だからかよく授業のこと聞かれるだけだよ」
田崎くんは口数が少ない男の子で、授業中によく寝ているから今何ページをしているのかよく聞かれる。
「ふうん。田崎って女子と話さないから、香帆狙ってるのかなって噂なってたよ」
「ないでしょ。田崎くん、部活一筋って感じだし」
田崎くんはバスケ部で授業が終わると真っ先に練習へ向かう。
私に対して特別ななにかを感じたことはない。
「そうなのかなー。田崎も高校生男子なんだから興味ないことはないと思うけどなー」
「田崎くんにそんな興味あるの?」
「え!? いや、そんなわけじゃ……」
絵里がごにょごにょ誤魔化すので私はピーンときた。
「なるほどねー。じゃあそれとなく田崎くんに好きな子いるか聞いとくね」
「え! いや、うん……聞いたらこっそり教えて」
えへへ、と笑う絵里は恋する乙女で可愛い。

そっかー。絵里は田崎くんのことが……。

そして、絵里の気持ちは聞いたのに、自分のことは伝えていないことに気づいてしまう。
隠そうっていわれてるわけじゃないから、伝えてもいいとは思うんだけど、もし孝ちゃんが秘密にしたいって思ってたら絵里にも秘密を背負わせちゃうもんな……。
孝ちゃんに聞いてからにしよ。