「リーベが楽しそうならよかった。これから出かけるから支度しようか」

「どこに行くの?」

「俺の職場だよ」


 リュカの職場。彼が仕事に行くなら、私は置いていかれると思っていたので嬉しく感じる。


「私も一緒に行っていいの?」

「もちろん。……着いたら色々聞かれるかもしれないけど大丈夫?」


 彼が心配そうに私のことを見つめてくる。
 何をそんなに心配しているのだろうか。


「聞かれるって何を?」


 彼が少し言い淀んでから口を開く。


「……あの部屋での暮らしとかなんだけど」


 “あの部屋での暮らし”。
 オリバーから毎日振るわれる暴力や暴言を思い出すだけでも、恐怖で体が震える。


「リーベが話したくないっていうなら、無理に話さなくていいんだ」


 そう言って私をベッドに座らせてから彼が抱きしめてくる。

 リュカの腕の中はやはり安心するが、それでも中々震えが止まらない。
 彼は私を安心させるように背中を優しく撫でてくれる。

 彼のおかげで少し落ち着いてきたので、顔を上げて彼を見る。

 彼は心配そうな表情をしていたが、私と目が合うと私を安心させるためか優しい笑みを浮かべる。