「君があの男にされたことを教えてくれないか?」


 やはり聞かれた。
 思い出すだけでも体が震えるのに、話すなんてできない。

「朝にも言ったけど、リーベが嫌だったら話さなくていいんだ。証拠は揃ってるから、あいつの刑罰はもうほぼ決まってる。だから、無理に思い出さなくていい」


 彼が私の肩を抱き寄せる。
 あの男とのことを思い出すだけで恐怖が蘇ってきて、ノアムさんの前だというのも忘れて彼の胸に顔を寄せる。
 リュカは私を落ち着かせるように背中を撫でてくれる。


「もし私が話したら、オリバーへの刑が重くなったりする?」


 彼のおかげで少し落ち着きを取り戻した後、そう尋ねる。


「まあ内容にもよるが、被害者からの証言もあれば刑は重くなるだろうな」


 彼に聞いたつもりだったが、ノアムさんが私の質問に答えてくれる。
 思い出すだけでもこれだけ体が震えるくらい怖いが、話せばあの男の脅威を感じずにいられる期間が延びるのなら話そうと決意する。

 そして、恐怖で震える声で所々途切れながら、あの男との暮らしを話す。