脱衣所の中に入り、扉を閉めると
鏡に映る自分が見えた。
ロングカーディガンから見える鎖骨に、
赤いマークが1つ、見えた。
カーディガンをめくると、
胸やおなかにも数か所、赤いマークがある。
『麗蘭は俺のだ…。』
綾人がこのマークをつける時、
呼吸を乱しながら
そう呟いていたような、気もするけど。
でも。
結局、今日も別の女のところに行くんだね。
私に対する独占欲を剥き出しにしているかと思いきや、
すぐに他の女の方に行ってしまう。
途端に、自分が惨めに思えてくる。
でも、最後は私のところに来てくれるんだから。
だから、惨めなんかじゃ、ない。
そう言い聞かせながらシャワーを浴び終わり、
脱衣室で体を拭いていると。
「麗蘭。」
扉の向こうから、綾人が声を掛けてきた。
「ごめん。そろそろ行かないと。」
「ん。分かった。」
「ハヤシライス、相変わらず美味かった。…また作ってよ。」
「気が向いたら、ね。」
「…ん。じゃあ…また来週、学校でな。おやすみ。」



