ガチャ、とリビングの扉が開いて、部屋の中に入ってきた綾人は、
上半身裸だった。
程よく鍛えられた、厚い胸板。
あの体に、さっきまで私は触れていたんだ。
淡いオレンジ色の間接照明の中で見ると、
また一段と、
色気を感じる。
思わずじっくり見たくなったけど、
気付かれないうちに目線を逸して、
気に留めていないふりをする。
その間に、綾人は濡れた髪をタオルで乾かしながら、
私の方へ歩み寄ってきた。
「うまそーな匂い。ハヤシライス、作ってくれたの?」
「ん。食べる?」
「うん、食べる。」
そう答えると、綾人は私の後ろに立ち、
私の首元に腕をかけ、
セミロングの髪に、顔を埋めてきた。
「…そんな格好してる麗蘭のことも、また食べたくなるな。」
そんなことを呟きながら、
私の髪の香りを、
ゆっくりと呼吸しながら、嗅いでいる。
それだけで身体がゾクゾクする。



