「聖…!」
意を決して聖に声を掛けたその時だった。
「…冷たくね!?」
「え…?」
「雨…降ってきてねぇか…?」
パラパラと小雨が降り始めた。
「マジかよ…。」
「中止になんのか!?」
雲を見るに、雨はこれからより本格的になりそうだ。中止になれば嬉しいけれど、そんなに甘くはないだろう。
そんなことを考えていると、見回っていた先生がやって来た。
「本当にひどくなってきたら撤退するが、一旦お前たちで考えて動いてみろ! 実戦でも雨は待ってくれないからな。」
ごもっともだ。
さて、どうするか。魔法を使ってはいけないのは火をつける際のみで、今はその指示はないからきっと使っても大丈夫なはず。
火、水、風の屋根を作ることもできるが、それだと常に魔法を発現させておく必要があるため魔力が切れてしまう可能性がある。草の屋根ももちろん可能だが、強度が確実ではない。
「私が土属性魔法でドームを作るのはどうかな。」
「おー!」
「それが1番利口そうだな。」
飛鳥の得意属性は風、聖は火だ。ずるい気もするが、ここは仕方がない。雨が強くなれば体力も奪われてしまう。
2人が焚き火のそばに集まると私はドームを作った。高さは2メートル程、あまり大きくはないが空気穴も作った。
「すげー! さすがだな真白! ありがと!」
「呪文破棄かよ…。」
「えへへ…。」
呪文を唱えた方が効力が高いのだが、つい癖で省略してしまった。魔法に支障はないし、良しとしよう。
私たちは火の大きさを調整すると、再度各々寝床を整え始めた。入口正面に聖、その左に飛鳥、聖を挟んで右に私と並んだ。
特にすることもなく手持ち無沙汰になってしまったため、ぼんやりと焚き火の火を眺めていた。
(聖と話したかったけど、この状況じゃさすがに訊きにくいな…。)
そんなことを考えながら聖を盗み見た。
その時聖の様子がおかしいことに気がついた。額に汗が滲んでいるし、体が強張っているようだ。体調が悪いんだろうか。
「聖、大丈夫…?」
「大、丈夫だ。」
そっと肩に触れるも、聖は苦しそうに返事をすると私の手を振り払ってそっぽを向いてしまった。
「本当だ! 無理は良くないぞ聖!」
飛鳥はそんな聖の顔を強引に覗き込んだ。こういうとき飛鳥は強い。
「うるせぇな!」
飛鳥を遠ざけながら後退すると、聖はそのまま壁に背中をつけて膝を抱え込んで顔を隠してしまった。
体調が悪いわけではないなら良いのだが、このまま悪化する可能性もある。熱はなさそうだが飛鳥にまで意地を張る必要なんてないのに…。
「…もしかして、狭い所苦手なのか?」
「え…。」
思わぬ飛鳥の言葉につい声が漏れた。その可能性は考えていなかった。
膝を抱く腕にさらに力が込められたのが見えてしまった。
(…そうだったんだ。)
聖はいつも勝気で物怖じしないタイプだから、苦手なものなんてないんだと勝手に思っていた。
苦手なものくらいあって当たり前だ。まだ9歳の男の子だ。
膝を抱えて小さくなる姿は、より幼い子どものように見えた。
「それならそうと言えよな〜!」
飛鳥は聖の左隣に勢い良く座った。
「体調が悪いんじゃなくてよかった!」
そう言って笑った飛鳥に釣られて私も笑顔になった。やっぱり飛鳥はすごい。
私も聖の隣ににじり寄ると同じように膝を抱えて座った。肩は触れていなかったけれど、ほんのり右肩が温かい気がした。
「俺、今日はこのまま寝る! くっついてたら怖くないだろ?」
「わ、私も、このまま寝る…!」
だんまりを貫いていた聖は「勝手にしろ」とだけ呟いた。
意を決して聖に声を掛けたその時だった。
「…冷たくね!?」
「え…?」
「雨…降ってきてねぇか…?」
パラパラと小雨が降り始めた。
「マジかよ…。」
「中止になんのか!?」
雲を見るに、雨はこれからより本格的になりそうだ。中止になれば嬉しいけれど、そんなに甘くはないだろう。
そんなことを考えていると、見回っていた先生がやって来た。
「本当にひどくなってきたら撤退するが、一旦お前たちで考えて動いてみろ! 実戦でも雨は待ってくれないからな。」
ごもっともだ。
さて、どうするか。魔法を使ってはいけないのは火をつける際のみで、今はその指示はないからきっと使っても大丈夫なはず。
火、水、風の屋根を作ることもできるが、それだと常に魔法を発現させておく必要があるため魔力が切れてしまう可能性がある。草の屋根ももちろん可能だが、強度が確実ではない。
「私が土属性魔法でドームを作るのはどうかな。」
「おー!」
「それが1番利口そうだな。」
飛鳥の得意属性は風、聖は火だ。ずるい気もするが、ここは仕方がない。雨が強くなれば体力も奪われてしまう。
2人が焚き火のそばに集まると私はドームを作った。高さは2メートル程、あまり大きくはないが空気穴も作った。
「すげー! さすがだな真白! ありがと!」
「呪文破棄かよ…。」
「えへへ…。」
呪文を唱えた方が効力が高いのだが、つい癖で省略してしまった。魔法に支障はないし、良しとしよう。
私たちは火の大きさを調整すると、再度各々寝床を整え始めた。入口正面に聖、その左に飛鳥、聖を挟んで右に私と並んだ。
特にすることもなく手持ち無沙汰になってしまったため、ぼんやりと焚き火の火を眺めていた。
(聖と話したかったけど、この状況じゃさすがに訊きにくいな…。)
そんなことを考えながら聖を盗み見た。
その時聖の様子がおかしいことに気がついた。額に汗が滲んでいるし、体が強張っているようだ。体調が悪いんだろうか。
「聖、大丈夫…?」
「大、丈夫だ。」
そっと肩に触れるも、聖は苦しそうに返事をすると私の手を振り払ってそっぽを向いてしまった。
「本当だ! 無理は良くないぞ聖!」
飛鳥はそんな聖の顔を強引に覗き込んだ。こういうとき飛鳥は強い。
「うるせぇな!」
飛鳥を遠ざけながら後退すると、聖はそのまま壁に背中をつけて膝を抱え込んで顔を隠してしまった。
体調が悪いわけではないなら良いのだが、このまま悪化する可能性もある。熱はなさそうだが飛鳥にまで意地を張る必要なんてないのに…。
「…もしかして、狭い所苦手なのか?」
「え…。」
思わぬ飛鳥の言葉につい声が漏れた。その可能性は考えていなかった。
膝を抱く腕にさらに力が込められたのが見えてしまった。
(…そうだったんだ。)
聖はいつも勝気で物怖じしないタイプだから、苦手なものなんてないんだと勝手に思っていた。
苦手なものくらいあって当たり前だ。まだ9歳の男の子だ。
膝を抱えて小さくなる姿は、より幼い子どものように見えた。
「それならそうと言えよな〜!」
飛鳥は聖の左隣に勢い良く座った。
「体調が悪いんじゃなくてよかった!」
そう言って笑った飛鳥に釣られて私も笑顔になった。やっぱり飛鳥はすごい。
私も聖の隣ににじり寄ると同じように膝を抱えて座った。肩は触れていなかったけれど、ほんのり右肩が温かい気がした。
「俺、今日はこのまま寝る! くっついてたら怖くないだろ?」
「わ、私も、このまま寝る…!」
だんまりを貫いていた聖は「勝手にしろ」とだけ呟いた。