前体操服を取りに行ったことはあったけど、教室の場所しか分からない。
校内で会うのも、もちろん応用室でだけだったし。
「…わかりません。」
「あ、3組ね。生徒手帳に書いてあるわ。」
ブレザーから少し出ていた生徒手帳は、いつの間にか先生の手に収まっていた。
そうか、生徒手帳ってこう言う時にも使うのか
「あら、四宮さん今日お誕生日なのね。」
「え?」
「お友達なのに知らなかったの?」
知らなかった。
俺ってこいつのこと、何にも知らないんだ。
いつも隣で笑ってたくせに。
肝心なことは何も知らない。
「誕生日に風邪ひいちゃうなんて、可哀想ね。まあ、これから親御さんに連絡して迎えに来てもらうわ。」
「…はい」
「授業もう始まってるでしょ?ありがとうね。戻っていいわよ」
そういえば、そうだった。
授業のことなんて、忘れてた。
緑がてきとーに言い訳しててくれたらいいけど。
「藍をよろしくお願いします」
「ふふっ、ただの熱だし大丈夫よ」
あまりにも俺が堅いから笑われてしまった。



