『お母さん……?』
俺はそっとダイニングに足を踏み入れると、母が呆然として、電話の受話器を持って立っていた。
俺はさっきまで不安だったのが一気になくなった。
なんで、あんなふうに思ったのか不思議だった。
『今日ね、僕、競走1番だったんだよ!』
僕が母に駆け寄ると、いつもだったら優しく笑って、抱きしめてくれるのに母はピタリとも動かなかった。
『お母さ…ん…?』
すると母は涙を流しながら、ぐずぐずと床に座り込んだ。
『お母さ…』
『お父さんね…
今日交通事故に合って…
死んじゃったんだって…』
メニュー