2年目の後半には需要予測システム関連の人員が増え、作業が落ち着いてきた。

大体3ヶ月ごとに事業部を異動して回っていたが、この秋からアパレル事業部に行くことになった。

業務改善の案としておぼろげに浮かんでいたものがあり、それが実現可能なものなのかを相談するなら村木さんがいいと思っていたので、絶好のタイミングだった。

「需要予測システムを応用して在庫管理システムを作りたいんです」

「在庫管理って、、うちは商社だぞ?」

「はい。だからこそわが社には商流全体のデータがあります。それを使えば、取引先が独自に作るシステムより、断然いいものができるはずなんです」

「まあ、確かにそうかもしれないが、、」

「そのシステムをサービスとして取引先に提供できれば、商流全体の無駄が省かれ、結果として自社の利益率も上がるんじゃないかと考えたんですが、、」

「まあ、そうだな」

「需要予測システムと違って直接的な投資ではないし、実現可能かがわからなくて。でももしやれるんなら、絶対また村木さんと一緒にやりたいって思ったんです」

「うーん、、わかった。上にかけあってみる」

残り1年半、このプロジェクトが動き出したら失敗は許されない。ここが正念場だ。

「最近の安田さんの様子は?」

今日は、俺の心の栄養補給の為に定期的に開かれるようになった、啓介と宗次郎さんとの飲み会の日だ。

「つーか最近思うんだけどさ、啓介ってなにげに凄いよね?」

「え?何?宗次郎さんにそんなこと言われるの気持ち悪いんですけど」

「俺が誠太郎の従兄弟だっていうのは安田さんも知ってるけど、都合が悪いから仲がいいのは隠してるじゃん?そうすると、彼女との関係は職場の先輩後輩でしかないわけ。その状態で彼女に変な虫が付かないように周りを牽制しつつ俺との距離も保たせるって、なかなか難易度が高いわけよ」

「彼女に変な虫が近づいてるんですか?ていうか、彼女は宗次郎さんに関心が、、?」

「話がややこしくなるから、誠太郎はちょっと黙っててくれる?で、啓介はこの状態で、更に誠太郎のこと売り込んでたわけでしょ?本当凄いと思うわ」

「いやいや、逆だから。誠太郎を売り込むことで椿ちゃんとは適正な距離が保ててたんだよ。椿ちゃんが誠太郎のこと好きなら、俺は友達以上にはなり得ない」

「え?彼女が宗次郎さんに関心があるってことは、彼女はもう俺のことが好きじゃないってことなのか?」

「だから!そんなことないから大丈夫だって!お前本当面倒臭いやつだなー」

「そうだよ。この前椿ちゃんに会った時に誠太郎の話をしたら、興味津々で目をキラキラさせて聞いてたから、絶対まだ大丈夫だって」

「目をキラキラ、、」

「はあー。こんな痛々しいやつがあんなに仕事ができるんだから、本当不思議だわ、、ほら写真撮ってやるよ。椿ちゃんに送っといて欲しいんだろ?」

今、俺と彼女の唯一の接点は、啓介を通して交換されるお互いの写真のみだった。

切ないにも程がある。だがありがたい。これでまた、俺は頑張れる。