「でも、どうして参加する気になったの? 前はそんな話してなかったよね?」
 そうたずねられ、心臓がビクッ! と飛びはねる。
「えっと、保健室でたまたま会った陸上部の先輩に、はげまされて……」
 すると、もうひとりの友だちが、目を見開いて。
「もしかして、そのひとって、白鴎先輩?」
「えっ!? どうして知ってるの?」
 胸のうちをズバリと見抜かれて、全身に衝撃がはしる。
「だって有名人だもん。陸上部のイケメンエース、白鴎 燐(はくおう・りん)。大ケガから奇跡の復活を遂げた努力のアスリート」
 大ケガ……!?
「奇跡の復活って、どういうこと?」
「しずく、知らないの? 白鴎先輩って、中学時代から評判の陸上選手だったんだけど、中二のときに交通事故に遭って、一年近く走れなかったんだって」
「走れなかった!?」
 走るの大好きだって言ってた、先輩が?
「選手としては戦力外って言われてた時期もあったんだけど、リハビリ続けて、高校生になって県の大会で優勝できたんだって。すごいよね、並大抵の努力じゃできないよ。そんなこと」