「え? 体育祭に参加したい?」
 翌日。
 職員室でわたしの申出を聞いた担任の先生は、正直驚いていた。
 そうだよね。
 ふだん体育の授業でもすぐにへばっちゃうわたしが、体育祭に出るだなんてビックリしちゃうよね。
 やっぱり足手まといって思われたかな……。
 でも、ちゃんと自分の気持ちを伝えなきゃ。
 せっかく先輩と約束したんだし!
「今まで身体動かすイベントは、みんなの迷惑にならないよう、なるべく休むようにしてたんですけど、応援とか、わたしにも力になれることがあったら、手伝いたいなって」
 先生は、静かにわたしの話に耳をかたむけていたけど、やがて、ニッと笑顔になって。
「うれしいわ。そんなふうに言ってくれて」
「え?」
「実は、鳥海さんにも体育祭に参加してほしいってずっと考えてたの。でも、身体のことがあるから、ムリにはすすめられなくって。でも、鳥海さんが参加に前向きでホッとしたわ」
 先生は天井をあおぎながら、
「正直ね、体育祭なんていうと、メンドくさいからサボっちゃえ、なんて子もけっこういるのよ。わたしみたいな大人からしてみれば、二度とやってこない貴重な青春のひとときをムダにするなんて、もったいない気がするんだけど。どうせなら、めいっぱい楽しむほうがいいわよね。そう思わない?」
 と、つぶやいた。
「それじゃあ……」
 いいの? わたしが参加しても。
「もちろん、あなたの体調は考慮するわ。ほかの先生とも相談して、あなたが安心して参加できるようサポートするから」
 まかせなさい! と、先生。
「ありがとうございます……!」
 みんなにはあたり前のことかもしれない。
 だけど、わたしはこんな日が来るなんて今まで想像もしてなかった。
 わたしも出られるんだ。生まれてはじめての体育祭に。