先輩は、じっとわたしの顔を見つめながら、
「ほんとうのところ、しずくちゃんはどうしたいんだ? 一度は体育祭出てみたいって思ったことないのかよ?」
 と、たずねてきた。
「それは――」
 もちろん、出てみたいなって思ったことはある。
 晴れわたる青空の下、いろんな種目に参加したり、一生けん命クラスのみんなを応援して、みんなで笑いあったりしたい。
 だけど。
「みんなの力になれないわたしが参加するなんて言ったところで、誰も喜んでくれないんじゃないかって。そう考えると、つらくなっちゃって」
 ずっと胸のなかに押しこめていた言葉をはき出すと、
「じゃあ、体育祭の日はオレのこと応援してよ」
 先輩はニカッとほほえんだ。
「ええっ!?」
 わたしが、先輩のことを?
 思いがけない提案に、心がゆれ動く。
「走ることはできなくても、応援くらいだったらできるだろ?」
 たしかに、応援だけだったらわたしにもできると思う。
 さっそうと走る先輩の姿を、心の底から応援してみたい。