「でも、いいなぁ。そうやって全力で走ることに夢中になれて」
「しずくちゃんは? 体育祭出ないの?」
 その言葉に胸がズキンと痛む。
「どうかした?」
 うつむいてだまりこむわたしを見て、心配そうな先輩。
「わたしが出たら、みんなの迷惑になっちゃうから」
 小さいころからずっとそうだった。
 走るのも、つなひきも身体に負担がかかるから、どの種目にもずっと参加できなくて。
「鳥海さんも参加できる競技、考えてみるから出てみない?」
 って、先生に声をかけられたこともあったけど、そのたびにクラスの子たちが冷たい表情でわたしを見てたこと、分かってたんだ。
「しずくも出るの?」
「あたしたちの足引っぱるだけなのに」
「あんな子が参加したら、かえって負けちゃうよね」
 ヒソヒソ、ヒソヒソ。そんな声が聞こえてくるいっぽうで。
 つらくなるばっかりだから、先生の許可を得て、これまで運動会や体育祭などのスポーツ大会は、全部お休みさせてもらうことにしていたの。
「わたしがいないほうが、クラスのためになるの。なんの役にも立たないんだもん」
 病気なんて好きでかかったわけじゃないのに。
 このせいで、みんなにきらわれるくらいなら、はじめから参加しないほうが――。
 パチッ!
 突然、先輩がわたしの顔を両手ではさんだ。
 険しい顔でわたしをにらんでる。
「先……輩?」
「二度とそんなこと言うんじゃない」