そうだったんだ……。
 わたし、先輩は自分とはなにもかもちがうと思ってた。
 明るくて、カッコよくて、自由に走ることもできて。
 はるか遠い世界の存在だと思ってた。
 でも、そんなのは大きなかんちがいだったんだ。
――こういうときにつくづく思うよ。元気って分けてあげられたらいいのにって。
――二度とそんなこと言うんじゃない。
――オレ、しずくちゃんが応援してくれたらきっとがんばれるから。当日、よろしくな!
「どうしたの!? しずく」
 突然泣き出したわたしを見て、友だちは大あわて。
 ゴメン、みんな。でも、どうしても涙が止まらないの。
 分かってたんだ。
 分かってたんだ、先輩はぜんぶ。
 身体を思うように動かせないつらさ。
 自分が他のひとの足手まといになってるんじゃないかって不安。
 わたしがずっと抱えていた苦しみや悲しみ。
 ぜんぶ、ぜんぶ分かってたんだ。
 自分が身をもって経験してたから。
「先輩……」
 わたしは、こんなふうに泣き虫で、みんなと同じようにできなくて。
 いつも、自分に自信がなかったけど。
 でも、体育祭のときにはできるだけがんばってみせるから。
 クラスのみんなのことや、先輩のこと、一生けん命応援するから。
 自分にできること、精いっぱいやってみせるから。
 まだ涙がにじむ顔をあげると、少しだけ心が軽くなった気がした。