大学生をレンタルしてみた

ああ、そんなことを言ってくれるんだ。
もしかしたら大阪に行ってから別れるかもしれない。どうなるかなんて分からない。
誰もいない土地で私一人放たれちゃうかもしれない。

「うん、ありがとう」
「これが言いたくて俺は全国で就活したの。椎果ちゃん、もっと笑うかなと思って」

子どもだと思ってた人が、私を外の世界へと引っ張ってくれる。

「もう少し俺を頼っていいよ」

頼りないくせにそんなことを言う。

なぜか私の体が一気に軽くなった。
体にたくさん付いていた錘が、一気にポロポロと散らばり始める。重過ぎた鎧が、彼の手によって少しずつ脱がされていく。
彼のことを信じてみてもいいかもしれない。

私の身を守ることばかり考えなくてもいいかもしれない。

「金なら出すから」

そう言って彼は笑った。
私はちょっと泣いた。

紫陽花だけが私たちの決心を見ていた。