4階に着いて廊下に出る。大きな窓ガラスから差し込む光が暖かい。銀杏がキレイに色付いている。

「きれい」
「研究室のエアコン止まった事件、この間だと思ってたのにもう秋になるんだね」
「本当ですね」

教授達の研究室は横にズラリと並んでいて、今回向かう橘教授の部屋は丁度真ん中くらいだった。

大学4年生は卒論のために入り浸っているが、それ以外の学生は基本的にこの建物自体に入る機会が少ない。そのためシンと静かな空間が長い廊下の端まで続いている。

この8号館は1階に私の部署の学生生活課が入り、2階は情報メディアセンターや情報資料室、3階4階と研究室が入っている。12年前に建てられた、このキャンパス内では一番新しい建物だ。静かで清潔感があって、私は一番好きだ。

背の高い銀杏がゆらゆらと風に揺れると、廊下に差し込む影も波のように揺れる。