不器用な神野くんの一途な溺愛

その時「ねぇ、莉子ちゃん」と、私の方を見ないまま、希春先輩は尋ねてきた。

横から見える先輩の目は、真剣そのもので――私の体に、再び力が入る。


「単刀直入に聞くよ。

アイツに何かされた?」

「え……」


アイツって……神野くんの事だよね?

希春先輩の口からトゲトゲした言葉出てきて、少しビックリする。

誰かを強く、そして激しく思っているような――そんな口ぶり。


「だ、い……す……」

「え、大好き?」

「ち!」


違っ!

大丈夫です、って言おうとして言えなくて……あぁ、もう!

私の口って、本当に使えないっ。


急いで首を振り、「違う」ことを伝える。

私が神野くんのことを大好きなんて、そんなこと、あるわけないよ。


「ビックリしたよ。そうだよね、泣かされたのに”大好き”って言ったのかと思った」

「 (ホッ、良かった。伝わった) 」


希春先輩を、チラリと見る。

さっきの真剣な表情じゃなくて、いつもの希春先輩の顔だ。

でも……安心するには、まだ早い。


「ねぇ莉子ちゃん。さっき俺が“ 泣かされた”って言ったの……否定しなかったね?」

「 (え、あ! さっきの) 」


『泣かされたのに”大好き”って言ったのかと思った』


顔を青くした私を見て、希春先輩は「やっぱそうか」と、ため息をついた。