*神野斗真*





「じゃあお祝いに、神野くんが持ってきてくれたケーキを食べましょう~」

「ちょっと待って、お母さん。お祝いって……何の?」

「え?決まってるじゃない、神野くんと莉子の婚約を祝って、」

「あぁ、いいですねぇ」

「よ、よくないから……っ!」



俺が小野宮の家でごちそうになった後――

事前にばーちゃんに聞いてた手土産ランキング一位だったケーキを持参したのは、正解だったらしい。

小野宮のかーちゃんは目をキラキラさせて「美味しいそうねぇ、ありがとう神野くん」とお礼を言ってくれた。



「いえ、お口に会えばいいのですが」



という俺の頭の中で「婚約」という言葉がずっと回っている。小野宮のかーちゃんは冗談で言ったのかもしれねぇけど、存外悪くねぇなと思う俺がいる。

と言っても、いくら何でも早すぎるってのは自覚している。


けど、あの小野宮が相手だから「善は急げ」だ。