不器用な神野くんの一途な溺愛

希春先輩は汗だくの私とは違って、いつもの優しい笑顔を向けてくれた。

全身から汗が出ている私は恥ずかしくて照れくさくて、目をそらすように教室の中を見回す。


ビーカーに真っ黒な机、フラスコ……


ここが化学実験室だと、すぐに分かった。


一番前の机には、沢山の数のノートがある。きっと今、希春先輩が持ってきたんだろうな。



「それで、莉子ちゃん」

「は、はいっ」

「どうして斗真に追いかけられてたの?」

「え、と……」



私が急に逃げたから――とも言いにくい。

どう答えようか悩んでいると、希春先輩が「訳がありそうだね」と、ニヤッと怪しく笑う。



「た、大層なわけが、あるわけじゃ……ないん、ですけど……」



わけわけ言ってしまって、頭がこんがらがる。希春先輩はプッと吹き出して「無理しなくていいよ」と気遣ってくれた。