「知らねーよ」
「知らないわけないでしょ」
「……気に食わねー言い方だな」
ニコニコ話す兄貴に対し、火花を散らして睨みを効かせる俺を交互に見ているのは、中島を初めとする女子たちだ。
「怒ってる王子、素敵」
「王子のお兄さんも背が高い」
「お兄さんもカッコイイ〜」
所詮俺は新入生代表の挨拶をしたから目立って「王子」なんて言われてるだけで、本来の王子ってのは、兄貴みたいなニコニコした奴のこと言うんじゃねーのかよ。
それを何となく分かっている兄貴は、女子たちに手を振って王子らしい挨拶をした後に、俺の耳元でこう言った。
「気に食わねー言い方だなって? そりゃ気に食わないよ。
だって――斗真でしょ? さっき、俺と莉子ちゃんの邪魔したの」
「……だったら?」
「決まってるよ」
ニコッと笑った兄貴。
そして――
「返してもらいに来たんだよ」



