不器用な神野くんの一途な溺愛


『あっ、痛っ……!』


あいつの声が、頭から離れねぇ。


「 (まともに聞いた第一声があれかよ……) 」


さっき初めて、小野宮の「声」を聞いた気がする。

透き通るような、綺麗な声だった。

いつも途切れ途切れ喋るし、あいつも緊張してるからか、俺が聞いている声はもっと低い。


「(くそ、また聞きたくなっちまう……)」


小野宮、お前、自分の魅力に気づいてんのかよ。

そんな可愛い顔して、そんな綺麗な声して、なんでコミュ障なんだよ。大損だろ。

早く治せよ。俺と一緒に、早く克服しろ。それで俺と話せばいーじゃねーか。飽きるほど。


その時――

周りにいた女子が「あ、神野先輩だ」とザワつき始めた。


「やぁ、斗真」

「……」


瞬時に、目が覚める。

そうだ。勘違いするな、俺。小野宮は誰のためにコミュ障を治してんだ。

それは、俺じゃねぇ。

あいつの努力の全ては、いま俺の目の前にいる、


「莉子ちゃんと帰る約束をしてたんだけど、どこに行ったか知らない?」

「兄貴……」


この兄貴に注がれているんだ。