険しい顔つきで会話を聞いていた一郎。
黙っているのに凄い怒りを感じている沙緒里。

「ホラ、彼氏と別れたよ。意外に簡単だったね」

「二股野郎は、沙緒里の前に現れるはずだ。
月曜日から仕事終わりに迎えに行くから!」

「え、戸山くん。本気?」

「オレは本気だ!
冗談でプロポーズするヤツなんか普通いないだろ!
こうなったら、行き先変更。」

「え、どこ行くの?」と質問している沙緒里を無視して電話をかける一郎。

〜…〜…
「あ、母さん?オレ。今どこ?そう。
悪いけど、そのまま寺田さんのお母さんを連れて家へ帰ってくれる?オレから家族みんなに大事な話しがあるからさ! 寺田さんも一緒に行くから…」

「ちょっと、戸山くん?大事な話しって?」

この状況についていけず、テンパっている沙緒里。
そんな沙緒里を納得させる為に、一郎はもう一度勇気を出した。

「ふぅ〜 沙緒里、もう一度言うぞ!
寺田 沙緒里さん オレと結婚して下さい。
オレと家族になろう!」

一郎の顔をじっと見ていた沙緒里。
誠実な一郎の言葉に涙が溢れた。

そしてゆっくりと頷いた沙緒里

そんな沙緒里を抱きしめた一郎。
沙緒里の耳もとで
「一生大切にする。5年後、お母さんが完治したら家族みんなで北海道旅行へ行こう!
家族みんなを大切にするって誓う。
浮気は絶対にしないって約束する。
沙緒里、大好きだ、愛してる」

「戸山くん。私も戸山くんを大切にする!
私も誠実な戸山くんが好きです。
私も家族みんなを大切します。
でも…浮気したら即離婚だからね!」

一郎はまた沙緒里を強く抱きしめた。
そしてお互い笑顔で初めてキスを交わした。