翌日から買い物袋を持ってバス停で待っている沙緒里を、一郎はマンションまで送る。

「昨日はごめんね。戸山くんのご厚意に甘えさせていただきます。」

「ああ。本当に気にしないでいいからさ!
米とか重たい買い物の時はオレを呼んでいいぞ。
体力だけは自信あるから〜」

「うん。ラグビーで鍛えてた戸山くんだから説得力ある〜
ハハハ、本当にありがとう。」

「おう。いつでもお気軽にお声掛けください」

「ふふふ。そうだ、お父さんは順調に回復されてるの?」

「ああ、来週の木曜日に退院になりそう」

「そう!良かったネ」

「ああ。会社復帰は来月からでそれまでは自宅で療養らしいよ」

「うん。お母さんも喜ばれてるでしょう?」

「口では親父のご飯を作るのが面倒くさいとか言ってるけど、安心したみたい」

「そう。本当に良かった」

「ありがとう。ところで明日の土曜日と日曜日は仕事?」

「あ、お母さんが抗がん治療の間は外来勤務だから、明日と明後日はお休みなの」

「そうなんだな。わかった。じゃあまた来週の月曜日だな」

「うん。お母さんの具合もだいぶ落ち着いてきたんだ」

「良かったな。急変したり困った事があればオレに連絡して!ウチの母さんも親父が退院したら動けるし。」

「うん。」

「あとで連絡先を交換しておこう。」

「うん。」

沙緒里のプライベートに一歩近づいた一郎は、心の中でガッツポーズをしていた。