「お母さん、戸山くんも忙しいかもしれないのに…」

「ごめんね。でも知らない人じゃあないしさ」とのんきな事を言い出すお母さん。

もしかして具合が悪いのかも…
バックから吐いても良いようにエチケット袋を準備した沙緒里。

白い高級な外車が病院入口のスロープに入ってきた。
私たちの前に止まり、運転席から戸山くんが降りてきてお母さんと私を後ろの座席へとドアを開けてくれた。

「戸山くん。本当にありがとう。凄く助かった」

「どういたしまして。寺田さんちのマンションは途中だから大丈夫だよ。さあ乗って」

「うん、お邪魔します…」

運転席に戻った戸山くんはゆっくりと車を発進させた。