「だ、旦那様……」


 なんと! 旦那様がわたくしの手を! 手を握ってくださったのです!


(温かい……これ、別人の手じゃありませんよね?)


 あまりにも信じられなくて、思わず視線をやったのですが、大きくてゴツゴツしたその手のひらは間違いなく旦那様に繋がっています。


「嫌じゃないか?」


 旦那様がそんなことを尋ねてきます。わたくしはちぎれんばかりに首を横に振りました。


「嬉しいです! すっごくすっごく嬉しいです!」


 はにかむような旦那様の微笑み。胸がキューッと苦しくなって、それからものすごく甘ったるくなります。


(食堂までの距離がもっと遠くなったらいいのに)


 そんなことを思いながら、わたくしは満面の笑みを浮かべるのでした。