愛する婚約者様のもとに押しかけた令嬢ですが、途中で攻守交代されるなんて聞いてません!

「見込みのない恋でも、わたくしが好きでやっていることですし、諦めるまでは終わらないからそれでいいんですよ〜。それに、いよいよ無理だった場合は親の決めた政略結婚をすることになるでしょうから」


 言外に『遊び相手になるつもりはない』ことを伝えつつ、わたくしは心のなかでため息をつきます。


(旦那様に会いたい……)


 ランチの時間、合わせられるかな? 合わせたいなぁ。一緒に食べられたら嬉しいんですが、訓練の関係で諦めることもしばしばなんですよね。残念。少しでも一緒にいたいんですが、今日は外勤ですし、厳しいかもしれません。


「せっかくの外勤だし、今日は外でランチしない? 俺、おごるし」

「ユーゴさんの婚約者様に誤解されたくないので、謹んで遠慮させていただきます!」



 そんなこんなでようやく巡回を終えたのですが、職場に戻るのがすっかり遅くなってしまいました。ほとんどの人が既に食事を終えているようです。
 もう一度ユーゴさんに食事に誘われましたが、これまた丁重にお断りしました。見かけによらず、案外たくましい人なのかもしれません。