(まあ、ユーゴさんは婚約者がいながら夜な夜な夜会に通っているってお話ですものね)


 なんならそのために転移魔法班のほうに配置を希望したって聞きました。(シフトにもよりますけど、夜は毎日家に帰れますからね)
 一途な旦那様とは正反対。男の風上にも置けません。
 とはいえ、この方ならほんの少しアプローチしたら靡いてくれそうなので、そういう点は羨ましくもあるんですが……。


「でもさ、あの人って五年も前の婚約破棄を未だに引きずってるっていう話だよ? 見込みのない恋よりも他に行ったほうが建設的だと思わない?」


 先輩はそう言って、わたくしの手を握ってきます。


(ああ、またですか……)


 そんなふうに言われるのは何人目のことでしょう? 同じ配置先である転移魔法の使い手だけじゃなく、水魔法部隊の方々からも同じように言われました。新人というのはなにをしていても、いなくても目立つらしく、しょっちゅう話しかけられますし、恋愛(主に火遊び)の対象だと思われてしまうようです。