さて、職場が同じとはいえ、仕事中は愛する旦那様にはほとんど会えません。まあ、当然ですよね。わたくしとは配置からして違いますし(運動と水魔法の才能があったら旦那様と同じ部隊に入りたかった!)、もしも仕事をほっぽり出して旦那様を見に行ったりしたら間違いなく嫌われてしまいますから!


「クラルテさんは今日はこっちの地域を回ってきてね」

「王都の西部から郊外にかけて、ですね! 承知しました! しっかりと巡回して、目に焼き付けてまいります!」


 転移魔法や救護魔法の使い手は、旦那様たちとは違い、勤務時間のほとんどを訓練に費やしたりはしません。

 そのかわり、いつでもどこにでも魔術師たちを自由自在に転移できるよう、地理を勉強したり、王都を巡回したりしています。(もちろん、魔法の訓練も欠かしてませんよ!)

 地図を見れば大体の地形は予想できますし、転移すること自体は可能です。けれど、道路の状況や障害物の有無、地図に載っていない家屋の変化などなど、いろんな要素がありますので、実際に自分の目で見て頭の中にインプットしておくのが一番なのです。

 特に、新人のうちは魔術の腕前も不十分ですし、実際に火災が起きた際はテンパりがちなので、こういった地道な努力の積み重ねが後にものをいう――と先輩が言っていました。