旦那様が出勤の日には、二人で仲良く歩いていきます。本当はわたくしの転移魔法を使ったら早くて一瞬で済むのですが、体力づくりをしたいという旦那様の強い希望です。


「別に、クラルテは転移魔法で出勤してもいいんだぞ?」


 あるとき、旦那様にそんなことを言われました。少しだけ申し訳無さそうな表情です。


「ふふふ……まだまだ旦那様はわたくしという女をわかっていらっしゃらないようですねぇ」


 わたくしがニヤリと笑えば、旦那様はキョトンと目を丸くなさいました。


「そんなこと、旦那様命のこのわたくしがするはずないじゃないですか! 少しでも長い時間、旦那様と一緒にいたいですもの! 当然、わたくしも歩いて出勤します! それに、仕事のときに魔力切れを起こしちゃいけませんし、温存したほうがいいでしょう?」


 わたくしの返事を聞きながら、旦那様は「そうか……それならいいんだが」と微笑みます。