(それは嫌だなぁ……)


 想像するだけで胸が痛い。
 クラルテがいなくなってしまったら、家がものすごく暗く、空っぽに感じられるだろう。というか、単純に寂しいに違いない。このものすごく押しが強い令嬢は、ほんの数日の間に俺の懐に入り込み、日常の一部になってしまったのだから。


「おまえな、いい加減ロザリンデのことは忘れろよ。あれは不幸な事故だったんだって。あの女が相手じゃなかったら、おまえも今頃は普通に結婚して、幸せになっていただろうよ」


 プレヤさんはそう言って、やれやれと首を横に振っている。


「そうですよ! 旦那様という最高で素晴らしい婚約者がいながら他の男性にうつつを抜かすなんて、女の風上にも置けません! わたくし、絶対に許せません! もしもわたくしがロザリンデさんとお目にかかる機会があれば、大いに懲らしめてやりますのに!」

「やめてくれ……クラルテが言ったら冗談に聞こえない」


 つぶやきながら、俺は思わず額を押さえた。