「正直、もしも旦那様に好きな人ができたらって思って、毎日気が気じゃありませんでした。たとえ相手にされなくても、しつこくアタックしに行くべきなのかなって、何度も何度も悩みました。だけど、もしもそれで旦那様に完全に嫌われてしまったら嫌だから……」


 クラルテの表情は俺からは見えない。


(普段底抜けに明るいクラルテがこんなことを思うなんて……)


 全く想像もしていなかった。いつだって自信満々で、不安もおそれもちっとも感じてなさそうで、まっすぐに俺に向かってきているように見えたから。


「クラルテ……」

「あーー、いけないんだ! 女の子を泣かせるなんて、罪な男だなぁ」


 背後から聞こえてきた間の抜けた声音に、俺は思わず振り返る。
 そこにいたのは予想通り――プレヤさんだった。