「知ってますよ〜。ですから、お気づかいいただかなくて大丈夫です! それに、旦那様はわたくしというより女性自体を避けていらっしゃいましたものね。ですから、夜会では勝算はないなぁと。もっと別の、インパクト大な出会い方を模索しておりまして」

「その結果が『押しかけ令嬢』と『同僚→恋愛結婚』だったと」

「そういうことです! まあ、旦那様の結婚話は完全に棚からケーキ的な幸運でしたが、わたくしたちが出会うことは最初から決まっていたわけですね」


 クラルテは食事をしながら、したり顔でうなずいた。


「いや、しかし……よく七年間も我慢したな。もしかしたら俺が他の女性と結婚するかもしれない、と思わなかったのか?」


 猪突猛進なクラルテの性格を考えると、ここまで耐え抜いたのは信じがたい。


「辛かったですよ?」

「え?」


 いつもとは違う少し沈んだ声音が聞こえてきて、俺は思わず目を瞠る。