(待てよ、俺)


 そもそも、当たり前のようにランチに誘ってしまったが、よく考えたらまずかったのではなかろうか? 入団したての頃は同期との繋がりも重要だ。色々と付き合いもあるだろうし、俺との話は明日家に帰ってからでも遅くはない。


「いや……同期と一緒に食べたいと言うなら別に」

「その気遣いは無用の長物ですよ〜。だって、わたくしの最優先事項は旦那様ですから! 同期とは研修で嫌でも一緒になりますし、お昼は別で構いません。っていうか、ほとんどがアカデミーの同級生ですし、いまさら親交を深める理由もありませんもの」


 まただ。俺の思考は完全に読まれている。
 というか、なにを言ってもクラルテに説き伏せられてしまうだろう。


「……それじゃあ、時間になったら迎えに行く」

「はい! お待ちしております」


 嬉しそうなクラルテを見送りつつ、俺は小さく息をつくのだった。