(嘘だろう? 本当にクラルテ……なのか?)


 今年度新しく入った他の職員と一緒に並ぶクラルテを眺めつつ、俺は呆然としてしまう。

 薄茶色の美しい髪も、神秘的な色合いの紫色の瞳も、愛らしい顔立ちも、華奢な体も、すべて俺の知っているクラルテそのものだ。普段とは違ってドレスではなく、魔術師団員の制服を着てはいるものの、その愛くるしさは健在だ。見間違いようがない。

 しかし、わかっていても受け入れがたいことというのは存在する。

 今朝俺を仕事に送り出すとき、クラルテは完全にいつもどおりだった。普段と違うところなんてひとつもなかった。『旦那様にしばらく会えないなんて寂しい』とつぶやきつつ、俺の襟を整えて『いってらっしゃいませ』なんて微笑むものだから、俺も寂しいかもしれない、なんてことを思っていたというのに……。


(会えなかった時間なんてほんの一時間じゃないか!)


 これじゃ詐欺だ。あのときの俺の気持ちを返してほしい。いや、無理だとはわかっているが……。