クラルテは俺に質問するだけでなく、自分のことをセットで教えてくれる。……いや、教えてくれるというか、無理やりプレゼンされているというのが正しい。


『わたくしは果物が好きです! ブクディワ領は農業が盛んな地域なので、美味しくて新鮮な果物がたくさん採れるんですよ。旦那様にも是非食べてみていただきたいです! 実家からたくさん取り寄せるので、楽しみにしていてくださいね!』

『わたくしは青が好きです! 旦那様の瞳の色だから! だから、アクセサリーはいつも青い石を選ぶようにしているんですよ』


 ほんの短時間の間にあの子のことが――あの子がどれだけ俺を想っているかが伝わってきた。本当に、思い込みもあそこまでいけば立派だと思う。


(次にクラルテに会えるのは明日の夜か……)


 消防局で務める魔術師は隔日勤務――丸一日働き、そこから一日休みを取り、また丸一日働く――という勤務体制を取っている。救護班や転移魔法の担当者、事務方はこの限りではないものの、ほとんどが俺と同じ働き方だ。なお、これは余談になるが、現場に行かないときは魔術や体術の訓練を行い、災害や火災に備えている。

 つまり、なにが言いたいかというと、たとえ出動していないにしても、俺は出勤してから丸っと一日家に帰ることができないのだ。