「いいじゃありませんか! 大恋愛っていうのは大抵片方の強い思い込みからはじまるものなのだそうですよ?」

「それで相手の家にいきなり押しかけるのか?」

「そうですよ〜! じゃなきゃ物語がはじまりませんから! 実はこれ、異国では昔からよくあるお話なんだそうです」

「異国? よくある……? 具体的にはどういう……」

「『恩返しのために美しい女性や動物等の異種族のメスが男性の家に押しかけて、そのままお嫁さんになっちゃう』っていうお話! みんな情熱的ですよね!」

「……一応確認するが、クラルテは人間だよな?」

「もちろん! 正真正銘ただの人間ですよ!」


 クラルテはえっへんと胸を張って笑っている。
 だが、俺としては人間じゃないと言われたほうが寧ろしっくりくるんだが!?


「ささ、一緒にブランチを食べましょう〜?」

「……ああ、そうだな」


 別に、人間だろうが異種族だろうが構わない。クラルテはクラルテだ。……そう思う程度には、この子のことを受け入れはじめている自分がいる。

 楽しそうに微笑むクラルテを眺めつつ、俺は自室をあとにするのだった。